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初めに


 こんにちは。
 スクタプの開発・運営を担当している吟遊堂です。

 今回は、日本文学に関する豆知識を紹介したいと思います。
 最初に投稿したブログ記事でもお伝えした通り、ここではスクタプの裏話のほか、豆知識も載せていきたいと考えています。
 ここでは、日本の文学作品にまつわる豆知識を中心に扱っていく予定です。

 今回取り上げる作品は『桃太郎』『竹取物語』です。

 ところで、皆さんはこんな疑問を抱いたことはありませんか?
 「桃太郎って、桃を切って生まれたならなぜ無傷なの?」
 「かぐや姫も、竹を割って外に出したならなぜケガをしていないの?」

 どちらも刃物を使ったなら、中にいた桃太郎やかぐや姫は当然ケガをしてしまいますよね。
 しかし、物語にはそんな描写はありません。

 実は、この2つの作品は、刃物を使って桃や竹から子どもを取り出したわけではないのです。

 まずは桃太郎が生まれる瞬間から見ていきましょう。



桃から出てきた桃太郎


1. 『桃太郎』ってどういう話?


 実際に桃太郎が生まれた状況を確認する前に、『桃太郎』という作品について紹介しますね。
 有名な童話なので、あらすじは知っている人も多いかもしれません。

桃太郎のあらすじは、

川で洗濯をしていたおばあさんが大きな桃を家に持って帰り、
桃から生まれた桃太郎をおじいさんとともに育て、
桃太郎がきびだんごで仲間にしたイヌ・サル・キジと一緒に鬼ヶ島に鬼退治に向かう

という流れです。

 物語の由来に関しては諸説あります。
 古くからある作品なので、ここで紹介したあらすじのような内容の作品もあれば、そうではない作品もあります。

 先ほど紹介したあらすじや、この記事で取り上げる「桃から生まれた桃太郎」というのは、「果生型」と呼ばれるタイプの『桃太郎』です。
 「桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの子どもが桃太郎」というバージョンもあり、こちらは「回春型」の『桃太郎』になるそうです。
 このほかにもいろいろなバージョン違いの『桃太郎』があるみたいですが、特に有名なのがこの2つです。

 ということで、今回は「果生型」の『桃太郎』を扱っていきます。

2. 桃太郎はどうやって生まれた?


 『桃太郎』の紹介はここまでにして、本題に移りましょう。
 果たして桃太郎は、どのようにして生まれたのでしょうか。

 その答えは簡単です。
 桃太郎は、おじいさんやおばあさんが桃を切って生まれたのではなく、桃が切られる前に桃から出てきたのです。

 つまり、桃太郎は自分から桃を割って外へ出たのです。
 刃物を使われたのではなかったから、無傷だったというわけですね。

 桃から生まれるというところから、「桃を切って生まれた」というイメージができてしまっただけで、よく読んでみると物語ではそういう風には描かれていないのです。

 そうはいっても、本当はどうなのか気になる人もいると思うので、『桃太郎』で描かれる「桃太郎が生まれた場面」を引用して、確認してみましょう。

以下の文章は、楠山正雄の『桃太郎』(青空文庫より引用)です。

「いいえ、買って来たのではありません。今日川で拾って来たのですよ。」

「え、なに、川で拾って来た。それはいよいよめずらしい。」

 こうおじいさんは言いながら、桃を両手にのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、桃はぽんと中から二つに割れて、

「おぎゃあ、おぎゃあ。」

 と勇ましいうぶ声を上げながら、かわいらしい赤さんが元気よくとび出しました。


 読んでみると、桃太郎が自発的に桃を割って飛び出してきたことがわかると思います。

 このように、桃太郎は自力で桃を割っているんですね。
 もし、手元に『桃太郎』の絵本などがあるなら、一度確認してみても面白いかもしれません。



竹の中にいたかぐや姫


 続いて、『竹取物語』の話に移りましょう。
 まずは『竹取物語』がどういう話なのかについて説明します。

1. 『竹取物語』ってどういう話?


 『竹取物語』は「現存する日本最古の物語」と呼ばれる作品です。
 成立年や作者などは不明ですが、紫式部が書いた『源氏物語』でも言及があるほど、昔からある作品なんですよ。

大まかなあらすじとしては、

竹取の翁が竹の中から見つけたかぐや姫を育て、
美しく成長したかぐや姫に求婚が殺到したため求婚者に無理難題な条件を課して求婚を退け、
月からお迎えがやってきて、最後は月へと帰っていく

という流れになります。

 今回重要なのは、物語の冒頭、竹取の翁がかぐや姫を見つける場面ですね。
 早速、状況を確認していきましょう。

2. かぐや姫はどうやって生まれた?


 竹取の翁がいつも通り竹を取りに行った際に根元が光っている竹を見つけ、その中にいたかぐや姫を手のひらに乗せて家へ連れ帰ったのが始まりです。
 気になるのは、根元が光っている竹の中にいたかぐや姫を見つけた方法ですよね。

 もし、ほかの竹と同じように、刃物を使っていたのなら、かぐや姫も無事ではすみません。
 桃太郎のときと同様、こちらも刃物は使われていないのです。

 では、どのようにしてかぐや姫が外に出たのかというと、「よくわからない」というのが正直なところです。
 気づいたら外にいるというか、描写がないんですよね。

 実際に該当部分を確認してみましょう。
 以下は、武田祐吉『竹取物語 : 校註』からの引用です。

今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづの事につかひけり。名をば讃岐造麻呂となむいひける。その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。

※「讃岐造麻呂」の「造」は二点しんにょう(変換できなかったため、一点しんにょうで代用)


 これが竹取の翁とかぐや姫の出会いです。
 桃太郎と違って、飛び出してくるような表現はされていませんね。

 むしろ、中を覗けたということは最初から閉じられた空間にいたわけではないのかもしれません。
 文章から答えを読み解くことはできませんが、竹を切ってかぐや姫を家に連れ帰ったわけではないということはわかります。

 ちなみに、2013年にスタジオジブリが『かぐや姫の物語』という映画を公開していたのをご存じでしょうか。
 その名の通り、『竹取物語』を題材とした映画です。
 この作品では、かぐや姫は成長途中のたけのこの中にいます。
 竹取の翁がそのたけのこを見つけると自然にほころんでいって、2人が出会うという展開になっています。

 これも解釈のひとつですね。



終わりに


 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 今回は『桃太郎』と『竹取物語』を取り上げて、どうして子どもたちは傷つくことなく外の世界に出ることができたのか、その謎を解説してきました。
 2つの作品に共通するのは、どちらも刃物で外側から切り開いたのではなく、子どもたちが自発的に外へ出た、という点です。
 かぐや姫の場合は、描写が控えめで正確なところまではわかりませんが、刃物を使わないやり方で出会い、外へ出たことには変わりありません。

 『桃太郎』も『竹取物語』も有名な作品ですが、人によっては子どものころに触れたきり、という人もいると思います。
 大人になってから読み返してみると、新たな発見ができるかもしれませんね。